虫と共に去りぬ

虫や金魚を中心に、生きものたちと歩む日々

2023年 読んだ本5月・6月

【5月】

▼「秘密」東野圭吾(2001)

 

人の「優しさ」は、見ようとしなければ見ることができないし、気付こうとしなければ、形を持てないもの。そこに潜む愛情が深く、大きなものであればあるほど。

その意味で「優しさ」は他者を介して初めて存在できるもので、たった一人では相対的な「優しさ」は生まれない。だからもしあなたが「優しい人」だと今までに言われたことがあるなら、そこには”あなたが思う以上にあなたのことを見ていた人がいた”ということなのだろう。

ラストシーン、ある女性の後戻りできない選択に向かう覚悟も苦悩も、たどって行けば主人公への圧倒的な優しさの上にあると気づく。しかしそれらを秘めたまま、彼女は主人公からも、そして読者からも、作品冒頭から共有していたはずの「秘密」をすべて掻っ攫って行ってしまった。その爽快感と置いていかれる寂しさと。

ただそうした彼女の「優しさ」を感じたのはあくまで主人公であり、彼女の「秘密」が嘘か真実かは、主人公が彼女の愛ある"企み"を想起した時点ですでに問題ではないように思う。主人公が「彼女はそういう(ことができる)人だ」という答えに辿り着けたことが、結局は主人公なりの「優しさ」で、愛だったように感じる。

読了後に「秘密」という文字に清々しさを感じさせられた。

 

 

【6月】

▼「カイン 〜自分の「弱さ」に悩むきみへ〜」中嶋義道

▼「ブランディング2.0 感性工学で実践する繁盛医院に変えるブランドの作り方」小山雅明

古本屋で見つけて。気づきがあった。